グランマ・ヘルガのオーストリア風ローストチキン

Grandma Helga ローストチキン

オーストリアの古い家庭レシピには、今のレシピ本のように細かい分量や長い説明が書かれていないことがあります。

このローストチキンも、そのひとつです。

材料はとてもシンプル。
丸鶏に塩をし、少量のTheaを入れ、少しの水と一緒にオーブンで焼く。途中で何度も焼き汁をかけながら、じっくり火を通していきます。

ハーブやにんにく、レモンをたっぷり使う今風のローストチキンとは違い、味の中心になるのは、鶏そのもののうまみ、塩、油脂、そして焼き汁です。

素朴ですが、だからこそ昔の家庭料理らしさがよく出る一品です。

このローストチキンについて

オリジナルのドイツ語レシピでは、料理名は短く「Hendl」と書かれています。

Hendlは、オーストリアや南ドイツでよく使われる言葉で、鶏肉やローストチキンを指します。
また、Rohrはオーストリアドイツ語でオーブンのことです。

そのため、Hendl aus dem Rohr は、日本語にすると「オーブンで焼いた鶏」または「オーストリア風ローストチキン」と考えるとわかりやすいです。

このレシピは、特別なソースやマリネを用意する料理ではありません。
塩をした丸鶏を高温のオーブンで焼き、途中で焼き汁をかけながら仕上げる、昔ながらの家庭料理です。

このローストチキンの思い出

このローストチキンには、私にとって大切な思い出があります。

義母は、このローストチキンを時々焼いてくれました。
最初に見たときは、材料があまりにもシンプルで、内心これで本当においしくなるのかなと思ったのを覚えています。

ところが、焼き上がったローストチキンは驚くほどおいしいものでした。
ほどよい塩加減で、肉はやわらかくてジューシー。耐熱皿に残った焼き汁にも、家庭料理らしいやさしいうまみがありました。

それ以来、このローストチキンは、私が義母に何度もお願いしたレシピのひとつになりました。

今でもよく覚えているのは、義母がとても丁寧に鶏肉を準備していた姿です。
義母はとても几帳面な人で、生の鶏肉を扱うときも驚くほど慎重でした。丸鶏を丁寧に準備し、キッチンペーパーでしっかり水分を拭き取り、オーブンで焼いている間も、使った場所をきれいに整えていました。

当時の私には、その丁寧さが少し意外に感じられたこともあります。
でも今思い返すと、それは義母らしい静かな気配りだったのだと思います。家族においしくて安心できるものを食べさせたい。そんな思いが、ひとつひとつの手順に出ていたのかもしれません。

今の作り方では、生の鶏肉を洗うことをおすすめするのではなく、皮にきれいな焼き色をつけるために、水分をしっかり拭き取ることを大切にしています。
それでも私にとっては、義母が台所で静かに、丁寧に鶏肉を準備していた姿も、このレシピの一部です。

元のレシピ名について

オリジナルの手書きレシピには、長い料理名ではなく、ただ

Hendl

とだけ書かれていました。

これは、おそらく当時の家庭ではそれだけで十分伝わったからだと思われます。

日本の家庭でも、昔のレシピメモに「煮魚」「炊き込みごはん」「卵焼き」とだけ書かれていて、細かい説明が省かれていることがあります。
それと同じように、このレシピも家族の中ではすでにおなじみの料理だったのかもしれません。

Grandma Helgaの手書きレシピ

Grandma Helga Recipes
Grandma Helga’s original handwritten recipe
Photo by the author, 2026

画像を開いて、右クリックで保存してください。

古いレシピを作るときの注意点

このレシピは、古い手書きのメモをもとにしています。

読み取れる内容としては、丸鶏に塩をし、お腹の中に少量のTheaを入れ、少しの水を入れた鍋または耐熱皿でオーブンに入れること。
さらに、焼いている途中で何度も焼き汁をかけることが書かれています。

温度は250℃と記されています。

ただし、現代の家庭用オーブンは火力が安定していて、250℃のまま焼くと、表面だけが早く焦げてしまうことがあります。
そのため、この日本語版では、最初は高温で焼き色をつけ、その後少し温度を下げて中まで火を通す方法に整えています。

古いレシピの雰囲気は残しつつ、今のキッチンでも失敗しにくいようにしています。

材料

丸鶏1羽分

  • 丸鶏 約1.2〜1.5kg
  • 塩 適量
  • マーガリンまたはバター 大さじ1〜2
  • 水 少量

必要に応じて

  • 途中で足すための熱湯 少量

現代の家庭で作りやすくする場合

  • こしょう 少々
  • 皮に塗るためのバターまたはマーガリン 少量

古いレシピに近づけたい場合は、丸鶏、塩、マーガリンまたはバター、水だけで作ります。

材料のポイント

丸鶏

このレシピでは、1.2〜1.5kgほどの丸鶏が作りやすいです。

小さめの丸鶏なら早く火が通り、大きめの丸鶏なら少し時間がかかります。
大切なのは、表面の焼き色だけで判断しないことです。

皮がこんがりしていても、中まで火が通っていないことがあります。
特に骨付きの部分やもも肉の周りは、しっかり確認してください。

焼く前に冷蔵庫から少し出しておくと、中心まで火が入りやすくなります。

Thea、マーガリン、バター

元のレシピにはTheaと書かれています。

Theaは、オーストリアで昔からよく使われていたマーガリンの名前です。
日本ではなじみがないため、一般的なマーガリンやバターで代用できます。

マーガリンを使うと、昔の家庭料理に近い素朴な仕上がりになります。
バターを使うと、香りがよく、少しリッチな味わいになります。

どちらを使っても作れます。

元のレシピでは、鍋または耐熱皿に少し水を入れることになっています。

この水は、鶏を煮るためではありません。
焼き始めに肉汁や脂が焦げつきすぎるのを防ぎ、あとで焼き汁として使うためのものです。

入れすぎると、ローストではなく蒸し焼きに近くなってしまいます。
底が軽くぬれる程度を目安にしてください。

このレシピの味つけは、基本的に塩です。

外側だけでなく、お腹の中にも軽く塩をします。
こしょうを少し足してもよいですが、ハーブやにんにくをたくさん使うと、元のレシピとは少し違う印象になります。

シンプルな味を楽しみたい場合は、塩を中心に仕上げるのがおすすめです。

作り方

1. 丸鶏を準備する
丸鶏の内側と外側をキッチンペーパーでしっかり拭きます。
皮に水分が残っていると、焼き色がつきにくくなります。
外側全体に塩をし、お腹の中にも軽く塩をします。

2. お腹の中にマーガリンまたはバターを入れる
丸鶏のお腹の中に、マーガリンまたはバターを大さじ1〜2ほど入れます。
古いレシピに近づけたい場合は、ここまでで十分です。
少し香ばしく仕上げたい場合は、皮の表面にも少量のバターまたはマーガリンを薄く塗ります。

3. 耐熱皿に入れる
丸鶏をロースト用の鍋、または耐熱皿に入れます。
底が軽くぬれる程度に水を入れます。
水を入れすぎると、焼くというより蒸す仕上がりになるため、少量で大丈夫です。

4. 高温で焼き始める
オーブンを220〜230℃に予熱します。
丸鶏を入れ、まず15〜20分ほど高温で焼きます。
皮に少し焼き色がつき始めるくらいが目安です。
元のレシピでは250℃とされていますが、現代のオーブンでは強すぎる場合があります。

5. 温度を少し下げる
最初に焼き色がついたら、オーブンの温度を190〜200℃に下げます。
そのまま中まで火が通るまで焼きます。
1.2〜1.5kgの丸鶏なら、焼き時間の合計はおよそ60〜80分が目安です。
オーブンの種類や丸鶏の大きさによって変わるため、最後は火の通りを確認してください。

6. 途中で焼き汁をかける
焼いている間、耐熱皿の底にたまった焼き汁を何度か丸鶏にかけます。
この作業が、昔ながらのローストチキンらしい味を作る大切なポイントです。
焼き汁をかけることで、皮にうまみがのり、皿の底のソースも濃くなっていきます。
底が乾きすぎる場合は、少量の熱湯を足してください。

7. 火の通りを確認する
皮がこんがり焼け、肉の厚い部分を刺したときに透明な肉汁が出れば、火が通ってきた目安です。
キッチン用温度計がある場合は、肉の厚い部分が約75℃になっているか確認します。
もも肉の付け根あたりは火が通りにくいため、特に注意してください。

8. 少し休ませる
焼き上がった丸鶏は、すぐに切らずに10分ほど休ませます。
休ませることで肉汁が落ち着き、切ったときに流れ出にくくなります。
耐熱皿に残った焼き汁は、少量の熱湯でのばして、簡単なソースとして使えます。

おいしく作るコツ

皮の水分をしっかり拭き取る

皮がぬれていると、焼き色がつきにくくなります。
焼く前にキッチンペーパーで丁寧に拭いておくと、仕上がりがよくなります。

水を入れすぎない

水はあくまで焦げつき防止と焼き汁作りのためです。
多く入れると、鶏が蒸されたようになり、ローストらしい香ばしさが出にくくなります。

焼き汁を何度もかける

このレシピでは、焼き汁をかける工程がとても大切です。
途中で何度かかけることで、皮に味がのり、焼き汁もおいしくなります。

焼き色を見ながら温度を調整する

元のレシピには250℃とありますが、今のオーブンでは焦げやすいことがあります。
皮が早く色づきすぎる場合は温度を下げるか、上からアルミホイルを軽くかぶせてください。

切る前に休ませる

焼き上がってすぐ切ると、肉汁が流れ出やすくなります。
少し休ませるだけで、肉がしっとりしやすくなります。

味と食感

このローストチキンは、ハーブやスパイスの香りで食べる料理ではありません。

塩、油脂、鶏の肉汁、焼き色。
その組み合わせで味わう、とても素朴なローストチキンです。

皮はこんがりと色づき、ところどころ香ばしくなります。
肉は焼きすぎなければしっとり仕上がります。

耐熱皿の底に残る焼き汁は、シンプルですがうまみがあります。
じゃがいもやごはんにかけると、家庭料理らしいやさしい味になります。

保存について

このローストチキンは、焼きたてがいちばんおいしく食べられます。

残った場合は、粗熱を取ってから冷蔵庫で保存します。
なるべく早めに食べ切ってください。

温め直すときは、強い温度で一気に加熱するより、低めの温度でゆっくり温める方が肉が乾きにくいです。

冷めた残りのチキンは、骨から外してサラダ、スープ、ごはん料理、サンドイッチなどにも使えます。

合わせたい付け合わせ

オーストリア風のローストチキンには、シンプルな付け合わせがよく合います。

  • パセリをまぶしたじゃがいも
  • ローストポテト
  • ポテトサラダ
  • ごはん
  • グリーンサラダ
  • きゅうりのサラダ
  • キャベツのサラダ
  • 温野菜

耐熱皿に残った焼き汁を少しの熱湯でのばし、じゃがいもやごはんにかけてもおいしいです。

よくある質問とこたえ

Hendlとは何ですか?

Hendlは、オーストリアや南ドイツで使われる言葉で、鶏肉やローストチキンを指します。このレシピでは、丸鶏をオーブンで焼いた家庭料理のことです。

Theaがない場合は何で代用できますか?

Theaは、オーストリアで昔から使われていたマーガリンの名前です。日本では手に入りにくいため、一般的なマーガリンやバターで代用できます。素朴に仕上げたい場合はマーガリン、香りを出したい場合はバターがおすすめです。

ハーブやにんにくを入れてもいいですか?

入れても作れますが、元の古いレシピにはハーブやにんにくは出てきません。Grandma Helgaのレシピに近い味にしたい場合は、塩、マーガリンまたはバター、水だけで作るのがおすすめです。

なぜ耐熱皿に水を入れるのですか?

焼き始めに肉汁や脂が焦げつきすぎるのを防ぐためです。水は焼いている間に鶏の肉汁と混ざり、簡単な焼き汁ソースになります。ただし、入れすぎると蒸し焼きのようになるため、底が軽くぬれる程度で十分です。

250℃で焼いても大丈夫ですか?

元のレシピには250℃とありますが、現代の家庭用オーブンでは焦げやすい場合があります。最初だけ高温で焼き色をつけ、その後190〜200℃に下げて中まで火を通す方が作りやすいです。

丸鶏に火が通ったかどうかはどう確認しますか?

肉の厚い部分を刺して透明な肉汁が出るか確認します。キッチン用温度計がある場合は、厚い部分が約75℃になっているかを見ると安心です。もも肉の付け根は火が通りにくいため、特に確認してください。

まとめ

グランマ・ヘルガのオーストリア風ローストチキンは、少ない材料で作る昔ながらの家庭料理です。

丸鶏、塩、マーガリンまたはバター、少しの水。
それだけで、焼き汁のうまみを生かした素朴なローストチキンになります。

今のレシピのように、たくさんの調味料や細かい工程はありません。
けれど、途中で焼き汁をかけ、焼き色を見ながら火加減を調整することで、昔の家庭料理らしい味わいに近づきます。

古い手書きレシピの短いメモを、今のキッチンで作りやすい形に整えた一品です。
シンプルなオーストリアの家庭料理を味わいたいときに、ゆっくり作ってみたいローストチキンです。

Grandma Helgaについて

Grandma Helgaは、長年家族のために料理を作り続けてきた母であり祖母です。

このサイトで紹介しているレシピは、彼女が日々の暮らしの中で実際に作ってきたものです。

手書きのレシピをもとに、大切に受け継がれてきました。

現在は、家族が内容を整理し、翻訳して公開しています。

どれもシンプルで、毎日の食卓に取り入れやすいレシピです。

Grandma Helga
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